ほな次は頭からやるんでよろしゅう~僕が緊張するのは
10数年前になるかな
今や大作家、大演出家になられた方が主宰する公演に恐れ多くも客演させて頂いた時の話
まずは本読み(読みあわせ)
緊張しながらもめちゃ和やかな空気で終わる
演出プランや作品説明は2分くらいで終わり
『もうええやん、はよ飲もう!』
と一気に飲み会になって、飲み会中も芝居の話しは一切無くて各々のプライベートトークに花が咲く
立ち稽古がスタートすると段取りや動線を付けていく時間がスタート
これまた終始和やかなムードでゲラゲラ笑いながら段取り付ける稽古が進む
二日間か三日間くらいで全ての段取りが決まる
この頃には僕も緊張が和らぎ楽しくなっていた
が
段取りが決まった日の稽古終わり
『ほな次は頭からやるんでよろしゅう』
と演出家さんが穏やかにおっしゃった瞬間全員の緊張する心の音が聞こえた
『キーン』だったか『ピシー』だったか忘れたが確実に聞こえた
座組には僕の大先輩にあたる関西を代表する百戦錬磨の方々が沢山いらっしゃったがその全員からその音が聞こえた
ハッキリ覚えてるのは、僕はその瞬間吐きそうな位の緊張が始まった!!
『段取りは付いたで、あとはお前らがどんだけ膨らましてくるねん?楽しみにしとるぞ、少なくともしょうもない芝居だけはしてくれんなよ』
という声が全員聞こえていたと思う
作品の段取りやルールを作るのは演出家の仕事、役者の芝居に責任を持つのも演出家の仕事、芝居で作品を彩るのは役者の仕事
だから
『責任持てる芝居しろよ』
無言のオーラが全身を貫い瞬間だった
そこから毎日の稽古が緊張の連続だった
台本世界と相手役を最優先して構築した上で、役としての存在を明確にしつつ爪跡をしっかり残す
課題が山積みで毎日がアッという間に過ぎていった
あの日々は今でも宝物だしその時の緊張感をちゃんと持てているか未だに自分に問いかける
緊張しないで舞台に立つことだけはしたくない
『落ち着くこと』と『視野を広くもつ』事は大事、だけど緊張しないというのは違う
あの頃は自分に出来る限界に挑んでた、座組全員がそうだった
演出家さんがそう誘ってくれたんだ
だから自分自身も終わった後に成長を感じた
今は自分の団体で自分が演出をしている作品に出演する事がメインになった
だからこそ
役者として誰よりも緊張して誰よりも限界を目指す気持ちを持たないと自分の成長はないと感じる
『あ~緊張する!』
という言葉を自分に投げかけないとその程度で終わってしまいそうで怖くなる
緊張してテンパってぐちゃぐちゃになった時に出した台詞こそ『本当』の台詞だったりもする
48歳、人生半分過ぎてあと何本の舞台に立てるか数えられるようになってきたから
一本一本を大切にしっかり緊張してギリギリまで高めて舞台に立ちたいと思う。